のらえもん監修『住んでみなければ絶対にわからないタワーマンションほんとの話』を読んで

僕の代わりに見た人は感想を教えてください

皆さまは「メアリと魔女の花」はご覧になられたでしょうか?
僕は「借りぐらしのアリエッティ」があまりにもアレだったので以来米林監督の作品は見ないと心に決めているのですが。
米林監督の作品というのは表層的にはそれまでのジブリ作品(端的に言えば宮崎駿監督作品)によく似ていて、美しい風景だとかかわいいキャラクターだとか今作は動きをウリにしているようですが、「ジブリっぽい」作品を作ることにかけては長くいただけあって長けているわけです。
しかし「それっぽく」はあるのですが、宮崎駿作品が観客につきつけるメッセージや投げかけのような核となるものがないために、環境ビデオを見た後のような締まらない印象しか残りません。
親子でとなりのトトロ千と千尋の神隠しを見たら受け取る印象も親と子では違ってきますが、親子でアリエッティを見ても「つまんなかったね」とか「え?これで終わり?」という一致した意見しか出てこないでしょう。
作品が成立していれば、見る視点によって建物がその姿を変えるように人によって別の印象を持ちますが、作品として成立していなければ、更地の印象は誰にとっても同じように、人によって別の姿を見せることもありません。
キャラクターがかわいいとかCGが秀逸だとか、庵野の描いた巨神兵がすごいとかは枝葉末節・局地戦の話であり、作品を作品たらしめる舵取りをする、つまり本筋・戦略を立てるのが監督であり、だからこそ、その作品の毀誉褒貶はひとえに監督の責任に帰せられるのも当然と言えるでしょう。

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トルストイ『人にはたくさんの土地がいるか』を読んで

「いま、トルストイ」(帯コメントより)

文豪の文豪たるゆえんは長編ではなく小品に表れると思っていて、夏目漱石の作品でも夢十夜の第一夜が一番好きだったりするんですが、このトルストイの小品『人にはたくさんの土地がいるか (トルストイの散歩道)』もするするっと引き込まれて行って最後あっと驚く結末で終わっています。
三谷幸喜や星新一でおなじみの和田誠の表紙というのもコミカルでシュールでいいです。
話の流れとしては都心タワマン住まいの姉が市街化調整区域で農業を営んで暮らす妹夫婦のもとを訪れ、東京カレンダー顔負けのキラキラ自慢話をしたところ(東京カレンダーネタについては綾考察編を参照)、妹の旦那・パホームがそのやり取りに奮起して大地主になろうと奮闘する物語です。
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のらえもん『本当に役立つマンション購入術』を読んで

著者近影
著者近影

湾岸タワーマンションのみならずマンション論壇のオピニオンリーダーとして知られるのらえもんさんの新刊が届きましたので早速読ませていただきました。

 

今までのマンション本と違うのは徹頭徹尾、購入者(エンド)視点で書かれているところです。
専門家は専門家としての立場と彼らが食べていくための仕組みがあります。
基本的に彼らがどこで利益を得ているのか誰からお金をもらっているのかにかかわるところは明かせませんし、最終的には著者に相談しにきてねとかこのサイトに会員登録してね的なノリになるので「続きはウェブで!」みたいな残尿感は残ります。
しかし本書の場合、買う際に考えることを、中古を買う時に考えることと将来売る時に考えることから逆算して導き出します。
エンドとして新築を買う時、中古を買う時、中古を売る時、どう考えるか何を見るかという時系列を考えに入れたエンド視点なのです。
未来の自分がどうするかを考えて現在の行動をとる。今の行動で未来の自分の自由が制限されないようにする。
それを考えないと今の自分の行動で未来の自分が大変なことになってしまう。
ドラえもんの「ドラえもんだらけ」がそんな話でした。

今がよければいいと未来の自分に助けを求めて最終的に大変なことになる話です(ドラえもんだらけ)
今がよければいいと未来の自分に助けを求めて最終的に大変なことになる話です(ドラえもんだらけ)

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新建築2015年7月別冊『マンションづくりと街づくり 長谷工コーポレーションの手法』

マンションのことなら長谷工~タラララッタラ♪(Youtube動画より)
マンションのことなら長谷工~タラララッタラ♪(Youtube動画より)

マンションのことならわかるんだ~作ってきたからわかるんだ~
というわけでマンションを語る上で長谷工を避けては通れません。
田の字型間取りと寝室が共用廊下に面する問題とか二重壁で有効面積狭まる問題とかネガティブな取り上げられ方をされることも多い会社ですが、リーズナブルな価格での住宅供給や腕力のいる込み入った用地・建て替えなど「長谷工でなければ事業化できなかった」とか「長谷工だったから買えた」とかプラスの側面も多いわけです。
そんな長谷工の取り組みを取り上げているのがこの一冊です。

『新建築』2015年7月別冊 マンションづくりと街づくり 長谷工コーポレーションの手法

 

 

 

長谷工の用地仕入れ能力っていうのはものすごくて、一見デベロッパーの物件に見えても長谷工の特命受注(長谷工が用地を押さえてデベロッパーに企画として持ち込んで事業化する方式)だったりとか多くてなんでこんなに土地押さえられるんだろうと不思議でしたが、結局ほかの会社では手を出せないような難案件もしっかりこなしていくからなんですね。なるほどですね。

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垣谷美雨『ニュータウンは黄昏れて』

不動産系の方々が皆絶賛していた垣谷美雨『ニュータウンは黄昏れて』を早速読んでみたのですが、これがおもしろくて。
ニュータウン管理組合編、不労所得お坊ちゃん翻弄編、幼馴染三人娘のその後編の三つの要素がからんだりからまなかったりしながら話が進んでいく構造で、不動産関係者必読だし小説・物語としてみても展開にドキドキしながら楽しんで読めます。
岡山から上京し高円寺の賃貸アパートを経てバブル崩壊直前にニュータウンの中古を買って価格暴落で身動きが取れなくなり高金利のローンを払い続けている母・頼子と美大を出て就職した会社が潰れ駅前の寿司屋でバイトをする娘・琴里の二人の視点があるため、やや読みづらくはあるが、「ニュータウンに入植した世代」と「ニュータウンで育った世代」のそれぞれの感覚や問題が垣間見え、重層的な物語となっている。
(頼子は作者本人がモデルであるため、購入当時の感覚や管理組合の描写はそこにいるかのようなリアリティがある)
時代の波に翻弄され、結果的に価値のないものを高額で買う羽目になり、早く売って都心に帰ろうとして建て替えに望みを懸けるというのはニュータウンの人だと割と一般的な思いなのかなという気がしました。
以下ネタバレ含みつつ自分の関心に寄せた感想です。

しかし帯の犬山紙子はミスマッチちゃうか
しかし帯の犬山紙子はミスマッチちゃうか

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