のらえもん監修『住んでみなければ絶対にわからないタワーマンションほんとの話』を読んで

僕の代わりに見た人は感想を教えてください

皆さまは「メアリと魔女の花」はご覧になられたでしょうか?
僕は「借りぐらしのアリエッティ」があまりにもアレだったので以来米林監督の作品は見ないと心に決めているのですが。
米林監督の作品というのは表層的にはそれまでのジブリ作品(端的に言えば宮崎駿監督作品)によく似ていて、美しい風景だとかかわいいキャラクターだとか今作は動きをウリにしているようですが、「ジブリっぽい」作品を作ることにかけては長くいただけあって長けているわけです。
しかし「それっぽく」はあるのですが、宮崎駿作品が観客につきつけるメッセージや投げかけのような核となるものがないために、環境ビデオを見た後のような締まらない印象しか残りません。
親子でとなりのトトロ千と千尋の神隠しを見たら受け取る印象も親と子では違ってきますが、親子でアリエッティを見ても「つまんなかったね」とか「え?これで終わり?」という一致した意見しか出てこないでしょう。
作品が成立していれば、見る視点によって建物がその姿を変えるように人によって別の印象を持ちますが、作品として成立していなければ、更地の印象は誰にとっても同じように、人によって別の姿を見せることもありません。
キャラクターがかわいいとかCGが秀逸だとか、庵野の描いた巨神兵がすごいとかは枝葉末節・局地戦の話であり、作品を作品たらしめる舵取りをする、つまり本筋・戦略を立てるのが監督であり、だからこそ、その作品の毀誉褒貶はひとえに監督の責任に帰せられるのも当然と言えるでしょう。

それでは本題に入りたいと思います。
今回のらえもん先生の『専門家は絶対に教えてくれない! 本当に役立つマンション購入術 』に続く2作目、『住んでみなければ絶対にわからないタワーマンションほんとの話』を読みましたのでその感想をば。

1.「2作目がこれでよかったのか?」
今作はタワーマンションに関する疑問質問に答えていく形式で進んでいきます。
いわば攻めではなく守りに徹しています。
抑えた筆致に務めていて、前作にあったような勢いやパッションを感じ取るのは難しいです。
筆者(監修者)は1作目がほどほど売れたとはいえ、まだまだ青コーナーの挑戦者なのですから、王者の風格を漂わせて信者を安心させるのではなく、信者を新たに獲得することに熱心になったほうがいいのではないでしょうか。
ローマ五賢帝の時代でも領土が最大になったのは2人目のトラヤヌス帝の時代で、成熟した哲人皇帝は5人目である。哲人皇帝が2人目に出てきても国はまとまらないのです。
聖書にしてもコーランにしても論語にしても教団が拡大しすぎて収拾がつかなくなったので統一見解として出したものであって、拡大しないうちから聖典は必要ありません。
むしろ草創期に必要なのは教祖のカリスマと尽力です。

2.「各章を誰が書いているのか?」
今回のらえもん監修とあるが、各章を誰が書いているかの表示がありませんでした。
立場が監修であり、すべてを自分が執筆したわけではないというスタンスなら各部の文責は表示すべきだと思いますし、そうでなくて自分で手を入れたので自分の名前で発表するということなら「監修」の文字は外すべきだったのではないでしょうか。
これでは立場が中途半端に見えてしまいます。

3.「住んでみなければ絶対にわからないタワーマンションほんとの話」というタイトルですが・・・
2番の誰が書いてるの?とも関係しますが、「住んでるからこそ言える」みたいな話はほとんどなかったような・・・。
よく調べられてはいますけれども。

「はじめに」と「おわりに」の意気込みの感じで本文もそうだと想像していたのでちょっと肩透かしにあったような感じは否めないです。
期待をしすぎたせいもあるでしょうが。
のらえもん監修という割にはテイストがあまり出ていないような気がします。(ダイヤモンド編集とかSUUMO編集となってても違和感ないような)
監修の役割も冒頭の監督と同じでどういう舵取りをするか、どういう作品を作るかということなので、今後監修の仕事をやるときには今一度その点頭に入れてやっていただければと僭越ながら思います。
のらえもん先生は専業ブロガーでないので生活のために本を書く必要もないわけなので、次は内向きでなく外向きの、前作のように新たな読者を獲得するようなワクワクするものを期待したいです。

前作感想:のらえもん『本当に役立つマンション購入術』を読んで

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