地位の話その1~青山パークタワーはなぜ青山パークタワーなのか?~

青山学院大学という大学がある。住所は渋谷区渋谷4丁目だ。
青山パークタワーというマンションがある。住所は渋谷区渋谷1丁目。
なぜ渋谷学院大学ではないのか?なぜ渋谷パークタワーではないのか?
答えは古地図にある。

1926年の地図。梨本宮邸が今の青山パークタワー。(チキンチャンネル「青山は渋谷の中にもあった!?」より加筆のうえ引用)

青山学院大学は旧青山南町七丁目、青山パークタワーは旧青山北町七丁目だから青山を名乗る資格があるわけだ。(青山学院大学は開学当時青山だったのが住居表示の紆余曲折で渋谷になっただけだから資格があるも何もというう話だが)
実感としては宮益坂上より青山側に渋谷アドレスでありながら青山を名乗る不届きなマンションが多い印象があったが、(青山コーポラスや青山アルコーブなど)不届きでもなんでもなく、旧町名にあやかっているだけだった。
しかしながら、旧町名にあやかっている正当性があるにしても、なぜ渋谷アドレスの物件がわざわざ旧町名までさかのぼって「青山」という名称を使いたがるのか?
それは「渋谷」と「青山」では「青山」の方が格が高い(と思われている)からである。
この土地の由緒正しさ、格といったものを「地位(じぐらい)」と呼ぶ。地位は地歴が宮邸であったり大名屋敷であったり偉人の住まいであったりすると箔がつく。
かつての宮様や殿様や大人物の住んでいたところに最終的に自分が「住まう」。
これは壮大な物語であり、何億というマンションをキャッシュでポンと買うような人を口説くにはそれだけの壮大な物語が必要なのであり、逆に言えばそれくらい大きな物語がなくては坪800万を買うモチベーションにならないのじゃないだろうか。素面の合理主義者は坪300台くらいまでしか買えないのじゃないだろうか。
不動産業界に入ると、この「地位」の話をじっくり聞かされて、セオリーを買ってこいと言われるのがセオリーである。(笑)

東京土地のグランプリ 2012-2013 最新版 (別冊セオリー)

なお、企画がデリケートだったからか、担当が辞めたのか、2012-2013年版で発行が止まっている。

さて一般的には都心3区>周辺区となるわけなので、港区>渋谷区となり、青山>渋谷となって、青山にルーツを求めることができるエリアは積極的に青山を名乗っていくケースがよく見られる昨今ではあるが、実はこの港区>渋谷区という図式が逆転しているエリアがある。
次回はその話を進めていきたい。

次回の舞台

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