のらえもん『本当に役立つマンション購入術』を読んで

著者近影
著者近影

湾岸タワーマンションのみならずマンション論壇のオピニオンリーダーとして知られるのらえもんさんの新刊が届きましたので早速読ませていただきました。

 

今までのマンション本と違うのは徹頭徹尾、購入者(エンド)視点で書かれているところです。
専門家は専門家としての立場と彼らが食べていくための仕組みがあります。
基本的に彼らがどこで利益を得ているのか誰からお金をもらっているのかにかかわるところは明かせませんし、最終的には著者に相談しにきてねとかこのサイトに会員登録してね的なノリになるので「続きはウェブで!」みたいな残尿感は残ります。
しかし本書の場合、買う際に考えることを、中古を買う時に考えることと将来売る時に考えることから逆算して導き出します。
エンドとして新築を買う時、中古を買う時、中古を売る時、どう考えるか何を見るかという時系列を考えに入れたエンド視点なのです。
未来の自分がどうするかを考えて現在の行動をとる。今の行動で未来の自分の自由が制限されないようにする。
それを考えないと今の自分の行動で未来の自分が大変なことになってしまう。
ドラえもんの「ドラえもんだらけ」がそんな話でした。

今がよければいいと未来の自分に助けを求めて最終的に大変なことになる話です(ドラえもんだらけ)
今がよければいいと未来の自分に助けを求めて最終的に大変なことになる話です(ドラえもんだらけ)


過去の自分の行動で縛られて今の自分が身動きが取れない、その状況を端的に描いたのが前に紹介したニュータウンは黄昏れてでした。
(参考記事:垣谷美雨『ニュータウンは黄昏れて』
分譲マンションを買うことで利回り重視で安普請の賃貸マンションを離れ、理想の生活を始めることができる。
しかしながら、万が一の出口(売却)が確保できなければ、何かあったときにいやいや住み続けるか追い銭を払って残債を消すしかない、それは嫌だからちゃんと選びましょうというのが本書第1章の「戦略的思考」です。
この辺りはのらえもんさんはやはり沖有人さんの一番弟子だなと実感します。

 

ただ、のらえもんさんは沖有人さんの戦略的マンション購入術から始めたものの、法然に弟子入りした親鸞が師の理論を発展させて独自の理論を打ち立てたように、沖さんの家庭の事情や嫁の意見を顧みないロジカルに徹したマンション買い替え理論から距離を置き、湾岸で暮らす中で生まれた土地への愛着や家族の幸せあってこその家であるという沖式戦略購入術と家族の幸せが第一理論(それは往々にしてニュータウンや郊外に広い家を購入することになり出口を失う)を折衷させた独自の理論を打ち立てたわけです。
のらえもんさんのブログが湾岸を主眼に置いているのに対し、本書は一般論という形でより広いターゲットに向けて発信しているのも、湾岸以外にもこの教義(?)を広めようとしている姿勢の表れではないかと思います。
これからマンションを買おうとする人にとって本書の内容は過不足なく、この一冊でプロとも戦えるでしょう。読みやすいですし。
仲良くしているから勧めるわけでなく、客観的に見ても心から勧められる一冊です。

最後になりますが、この本を書いたことによってのらえもんさんの立ち位置が難しくなったなというのはあって、というのも、今まではアマチュアであることを強みにしてきたけれども、本という形であれ、お金をいただいてしまう以上「プロ」に足を踏み入れてしまったと思うのです。
のらえもんさんが今後「プロ」としてどう活躍されるのか、あるいは・・・というのはすごく心配しているところでもあり、また期待しているところでもあります。
まずはお手並み拝見、というところでしょうか。(笑)

構成としては1章2章が持論、3章以降がQ&Aとなります。ブログ(マンション購入を真剣に考えるブログ)をこうまとめたか!と感心しました。

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