ル・サンク小石川後楽園建築確認取り消し事件について(4)

これまでのあらすじ⇒
ル・サンク小石川後楽園建築確認取り消し事件について(1)
ル・サンク小石川後楽園建築確認取り消し事件について(2)
ル・サンク小石川後楽園建築確認取り消し事件について(3)

3週間更新が滞ったことから「小石川されたのではないか」とか「こんにゃくえんまに埋められたのではないか」と各方面からご心配の声をいただきましたが、「安心してください、書いてますよ!」
さて、10年以上に及ぶ地域住民とデベロッパーの抗争話し合いの途中、2014年3月に文京区の絶対高さ制限が導入されたことがこの問題の大きなポイントになっています。

文京区絶対高さ制限図 ル・サンクの位置する小石川2丁目は22mと定められた(区報ぶんきょう2014/3/20より)
文京区絶対高さ制限図 ル・サンクの位置する小石川2丁目は22mと定められた(区報ぶんきょう2014/3/20より)

当該開発区域は22mの高さ制限が定められ、容積率の完全消化が難しくなったわけです。
しかしながら、デベロッパーとしてはそこまで高さを抑えてしまえば販売計画が狂ってしまいます。
そこでNIPPOと神鋼は絶対高さ制限の条例施行前にすべりこみで従前の高さ(27m)の計画に基づく工事に着手することにしました。

すべりこみ(イメージ) 左が地域住民、右がデベロッパー
すべりこみ(イメージ) 左が地域住民、右がデベロッパー

このことが後に起こる不幸の始まりと誰が予想したでしょうか。

条例施行前にすべりこみで既存不適格を承知で工事を始めさせたデベロッパー達。
疲れからか、不幸にも黒塗りの近隣住民に取消請求されてしまう。
神鋼をかばいすべての責任を負ったNIPPOに対し、
隣地の主、暴力団員近隣住民に言い渡された示談の条件とは・・・。

2015年9月の建築審査会の議事録を見ると、主要な論点は以下です。
1.南側道路(堀坂)が13mの勾配があるため、地下2階から2階までの4フロアを建築基準法上の避難階としているが1階からは階段を使って2階か地下1階へ移動しないと外へ出られない構造になっている。駐車場の車路を使って出るにしても手すりがないため避難経路の要件を満たさない。
2.多目的室(いわゆるHANARE)が住宅ではないとしているが、居室に該当するのではないか。居室であるとすれば採光を満たしていないし、容積に参入しなければならない。窓先空地も設ける必要がある。(HANAREは共用廊下とみなして容積から除外している)
3.2012年4月の開発変更によって盛土が加えられ、平均地盤が上がった。それにより建物がより高くなり、建物北側の住民に日影被害が起こっている。

3はともかくとして、1と2は近隣住民が申立人になる資格はあるのか正直疑問なところはあります。
避難経路の問題や採光がないことが近隣住民に何の関係が?という。
とりあえず瑕疵を見つけてなんとしてでも潰そうとする強い意志が感じられます。
近隣住民側には法律家の先生もいらっしゃるようなので相手が悪かった感もあります。
審査会の議論の結果、9月7日に執行停止、11月2日に建築確認取消となりました。
(建築確認取消の理由は論点1に基づくものでした。)

通常であればここで避難経路にかかわる部分に多少手を入れて直して、引き渡しを延期してキャンセルする人には手付倍返ししてってなるのですが今回高さ条例施行前のすべりこみ既存不適格の建物を建てているために、新たに建築確認申請する際には現行法(つまり高さ22m)に適合する形でなければならないので、結局作った建物は上を削るか立て直すかしかないわけです。
これで購入者全員キャンセルとなり、説明会は大荒れしました。
デベが購入者から責められるのは当然ですが、100%責めを負わせるのも酷な気がします。
HANAREの問題(連載第1回参照)や条例施行前すべりこみはデベ側も横着だなあとは思いますが、正直ここまでやる住民側というのも半端ないですね。
前回触れたように住民側は後戻りできないように条例施行まで主要論点を控えて取り返しのつかないダメージを与えようと意図していたわけです。
そう考えるとこんなモンスター住民しっかりと権利を主張する近隣住民とお隣さんにならずに済んだのは購入者たちにとってもむしろ幸運だった、無理やりいいとこ探しをすればそういう見方もできるかもしれません。
次回、最後にこの事件のまとめと影響について考察してルサンク連載を終えたいと思います。
ご清聴ありがとうございました。

最終回はこちら⇒ル・サンク小石川後楽園建築確認取り消し事件について(5)終

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