垣谷美雨『ニュータウンは黄昏れて』

不動産系の方々が皆絶賛していた垣谷美雨『ニュータウンは黄昏れて』を早速読んでみたのですが、これがおもしろくて。
ニュータウン管理組合編、不労所得お坊ちゃん翻弄編、幼馴染三人娘のその後編の三つの要素がからんだりからまなかったりしながら話が進んでいく構造で、不動産関係者必読だし小説・物語としてみても展開にドキドキしながら楽しんで読めます。
岡山から上京し高円寺の賃貸アパートを経てバブル崩壊直前にニュータウンの中古を買って価格暴落で身動きが取れなくなり高金利のローンを払い続けている母・頼子と美大を出て就職した会社が潰れ駅前の寿司屋でバイトをする娘・琴里の二人の視点があるため、やや読みづらくはあるが、「ニュータウンに入植した世代」と「ニュータウンで育った世代」のそれぞれの感覚や問題が垣間見え、重層的な物語となっている。
(頼子は作者本人がモデルであるため、購入当時の感覚や管理組合の描写はそこにいるかのようなリアリティがある)
時代の波に翻弄され、結果的に価値のないものを高額で買う羽目になり、早く売って都心に帰ろうとして建て替えに望みを懸けるというのはニュータウンの人だと割と一般的な思いなのかなという気がしました。
以下ネタバレ含みつつ自分の関心に寄せた感想です。

しかし帯の犬山紙子はミスマッチちゃうか
しかし帯の犬山紙子はミスマッチちゃうか

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