【東京女子図鑑】~綾の東京物語~を読んでみた

当サイトで考察させていただいた東京カレンダーの綾の話が【東京女子図鑑】~綾の東京物語~として先ごろ書籍化されましたので読んでみました。

当サイトの考察記事シリーズ(全5回)はこちら。
東京カレンダーの綾は一体どこに住んでいたのか?その1
東京カレンダーの綾は一体どこに住んでいたのか?その2
東京カレンダーの綾は一体どこに住んでいたのか?その3
東京カレンダーの綾は一体どこに住んでいたのか?その4
東京カレンダーの綾は一体どこに住んでいたのか?その5(終)

本編への言及考察については前記記事で言い尽くしたので付け加えることはありません。
さて、「大幅な書き下ろしを加えてついに完結」と帯にありますが、明確に付け加えられているのは
・プロローグ
・エピソードゼロとしての秋田編
・2篇のコラム
・綾43歳編
の4つで、本編はあまり変わっているような感じはしません。(比較検証は時間のある人に譲ります)
連載第1話では東京への憧れから上京した何も知らない若い子だったのが、エピソードゼロの秋田編では母が東京出身で、小さい頃からずっと東京に憧れてきたことになってました。
まあ43歳の綾が子供時代を振り返っているとすれば多少の歴史修正主義は仕方ないのでしょうが、0話の東京へのこだわりと1話の屈託ない田舎娘感のあいだの落差に違和感を禁じえません。
コラム1本目は綾の、子供を産まなかった選択についての演説的ななにか。
綾の結婚の話も子供の話もそうなんだけど、ナチュラルボーンな結婚や出産を望むなら打算や計算、今の生活に対する執着を一旦捨てなければならないのに、それにしがみついたままさらに手に入れようとするから失敗するわけですよね。
「運命の女神が目の前に来た時に自分の都合を優先するな」(DJあかいの言葉)って話です。

運命の女神で検索したら一番最初に出てきた画像(イメージ)
運命の女神で検索したら一番最初に出てきた画像(イメージ)

歳をとって「自分は何も手に入れられなかった」と嘆く人は結局のところ、新たなものを手に入れるより手持ちのものを守り続けることを選び続けてきただけなのです。
何も手に入れないことを選んだのなら、それを後悔してはいけません。
でも頭のいい人ほど運命に身を委ねることを不安に思ったり怠惰に感じたりしてしまうのでしょうね。
何も考えてなさそうな人がありとあらゆるケースを考える人より幸せそうで、より多くのものを得ているケースをよく見るのは人の努力でできることなど実は限られていて、それよりずっと人生や運命といったものの大きな流れがもたらす影響の方が大きいことを示唆しているのかもしれません。

親鸞の教えをまとめた歎異抄に「善人なほもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」という有名な一節があります。
「善人ですら往生することができるのだから、悪人はなおさらである」普通の人はこれを聞けば逆じゃないのかと思うでしょう。
しかし、善人は自分の行いや修行(自力)で救いに近づけると考えているから阿弥陀仏の救いからは遠いのに対し、悪人はもともと自分の力で救いに至れるとは考えていないので阿弥陀仏の力(他力)だけを頼りにするので、悪人の方が善人より救いに近いという考え方なのです。
(自力ではなく他力でもって往生しようとするのが本来の意味の「他力本願」です)
そう考えると綾も自力を頼みにしすぎたのかもしれません。まあ最後の方はちょっと悟りを開いた感はありますが。

43歳の綾はモダンリビングを購読して築20年の中古マンションをフルリノベーションして住むというなんとも今風の結末です。
(東京カレンダーが最近カウカモと提携したのも関係あるのでしょうか?)
マテリアル・ガール」と「限りない欲望」の果てに得た綾の悟りとは・・・。(この2曲については考察記事参照)
(モダンリビングはこんな感じ。)
モダンリビング ML WELCOME Vol.2 木の家で暮らそう

まあそれにしても僕みたいに本編連載を隅から隅まで読んでた人にはちょっと物足りない内容ですよね。
web連載読まずに初見の人なら1000円出してもいいかもしれないけど。
関係ないですけど、これだけがんばったのにライターさん名前でないんですね。ちょっとかわいそう。

【東京女子図鑑】~綾の東京物語~

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