「パリ3区の遺産相続人(原題:My Old Lady)」を見てきたよ

パリ3区の遺産相続人
パリ3区の遺産相続人

いい映画だったという評判を聞いたので早速見に行ってきました、「パリ3区の遺産相続人」。
60を目前にしたニートが死んだ父から相続したパリのアパルトマンを訪ねてみると、そこには90歳のお婆ちゃんが住んでいて、彼女が死ぬまで売ることはできず、毎月彼女に生活費を払わなければならない「ヴィアジェ」による取引によるものだとわかり・・・という内容。
過去の因縁、父と子、愛に生きた二人、親子の葛藤、過去との決別、そして新たなるスタートというオーソドックスなテーマでありながらヴィアジェという耳慣れない制度がスパイスとして効いてて、おもしろく調理されてます。(不動産関係者ならなおさらおもしろく感じることでしょう。フランスでも不動産屋はマイソクベタベタ貼るんだ、とかゆかいなおとなりさんとの和解とか)


ヴィアジェとはこんな制度です。

viager(m)というのは、フランス語で終身年金のことだが、
Appartement vendu en viager とは何か? 終身年金で売りアパート?
不動産売買にあるフランスのひとつの制度なのだが、おそらく、現在も将来的にも日本の文化には受け入れられなさそうな制度だ。

ヴィアジェviagerと記してあるアパルトマンは格安だが、買ってもすぐに住むことができない。
なぜなら、このアパルトマンはたとえ買っても家主の老人が住んでいるからだ。
では、いつになったら買主が住むことができるのか? それは老人の死後ということになる。

売り手のメリットは、生前に売却するので売却金を自分が受け取ることができること。
特に相続人がいないような老人、相続人に相続したくないような老人には良い。

買い手のメリットは、第一に通常の物件より格安だということ。
第二に、頭金の額をを売主と相談し、その後は年金という形で売主に分割して支払う。
つまり、家主が亡くなってしまえば、払うはずだった年金を払わなくてすんでしまう。
早い話、家主の寿命が短ければ得をするが、長生きされると損をするという、なんと恐ろしいシステムではないか。
[フランス] ヴィアジェってなに?より

ざっくり言えば売主の寿命を賭けにしたギャンブルです。買う側からすれば。(本作ではその一般的な見方に対して素敵な解釈がされていますが)
しかしながら、売主は終身年金が保証される(毎月の送金が滞れれば買主は所有権を失う)のでいいことづくめです。
長生きしすぎると毎月のお金がもらえなくなってしまう日が来るリバースモーゲージとは似てるようでその点が大きく違います。
劇中でも触れられている次のエピソードはヴィアジェの諸行無常を示しています。

1965年、90歳のジャンヌ・カルマンさんからヴィアジェでアパルトマンを買った不運な男性の話。カルマンさんはなんと122歳で天寿を全うした。彼は年金を払い続けていたが、カルマンさんが亡くなる1年前に亡くなってしまった。
[フランス] ヴィアジェってなに?より

ヴィアジェを利用することで金の苦労がなくなり、余計長生きしやすいとか統計上優位な差があるかもしれません。
こんな緩い、運試しみたいな制度が実際に導入されているフランスはおもしろいですね。
年金問題の緩和のために日本でも導入されたりしないでしょうか。
そしたら左前になりつつある実業家何代目とか何代にも渡る相続税や分割で収益物件がもがれていった旧家からヴィアジェで買いたいですね。
松濤とか代々木上原とか。
そんな夢も描ける上に映画自体もおもしろいし、女優さんは熟女かわいいのでとてもオススメです。
隣の人がお婆ちゃんを見てダウントンアビーだ!って叫んでました。
ハリウッドみたいな全年齢なわかりやすさとは違う、見たあとちょっといいなって思うようなそんな映画です。

輸入盤はもうDVD出てるんですね。

MY OLD LADY

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